
歯周病原菌に極めて有効な抗生物質の登場により歯周病の治療は大きく様変わりしました。
顕微鏡検査でお口の中から歯周病原菌が検出されたら、まず薬で歯周病菌を駆除するのです。
ご存知のように胃がんの原因となる「ピロリ菌」を除菌するのと似ています。
この新しい治療法は大まかに以下のような流れで進みます。
1.検査
① 歯周ポケット検査
歯と歯茎の間の溝の深さを測ります。歯周病の進行度が分かります。
② 細菌検査
位相差顕微鏡によりプラーク(歯垢)内の細菌を検査します。
2.投薬
顕微鏡検査による結果、歯周病原菌の存在が確認された場合は抗生物質を服用します。
3.治療
出来るだけ速やかに歯石などを取ってお口の中の感染源を徹底的に除去します。
4.抗カビ歯磨き剤による歯ブラシ
お口の中にカビなどの真菌が増えると歯周病原菌が再発生しやすくなります。抗カビ歯磨き剤を使ってお手入れをしてください。
5.メインテナンス
定期的に顕微鏡検査を行い歯周病原菌の再発生の有無を確認します。それに加え普段歯ブラシの届きにくい部分に歯周病原菌が残らないように歯のクリーニングを行います。
この治療法のカギは 「② 細菌検査」にあります。 顕微鏡画面で確認することで患者自身もピンとこなかった歯周病の原因がすぐに理解されますし、薬の劇的な効果を自分の肉眼で確認できるのです。さらには歯周病原菌の経過も定期的に自分の目で観察できます。これは今までの歯周病治療にはなかった極めて画期的なことなのです。顕微鏡の画像という客観的なデータを私たちと患者さんが共有することで歯周病に対して協働できるようになりました。
さらに大きなカギは、歯のプラーク(歯垢)の量から質への転換
従来の歯周治療では「ほぼ完璧なプラークコントロール(歯磨き)」が治療の大前提でした。すなわち一日に数回、毎回15分程度の歯磨きが必要とされました。
しかし、新しい治療法はちょっと違います。もちろん歯磨きは重要ですが、大切なことは病原性のあるプラーク(歯垢)が着かないようにすることです。多少の磨き残しがあってもそこに歯周病原菌や成熟したカビ菌が含まれていなければ問題はないのです。それを可能にするのが「抗カビ歯磨き剤」です。これを使うことで歯ブラシに対する肩の荷が大分楽になりました。
当院ではこの新しい治療法を取り入れて以来、今まで治りにくかった歯周病が「治せる病気」になってきました。
開院以来何年も患者さんたちと歯周病治療に苦闘してきた末、たどり着いた結論が「ごく普通の人たちが長く続けられる治療法」が最良の治療法ということでした。
高齢の方の治療をしていて感じるのは、「とにかく“総入れ歯”は避けたい、何本かしっかりした歯があれば入れ歯であっても何とか出来る」と言うことです。